小畑健 スペシャルインタビュー
【第2回】連載デビュー、そして研鑚の先の開花

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新たなる代表作『DEATH NOTE』『バクマン。』

――続く『DEATH NOTE』も、『ヒカルの碁』に負けない勢いでした。

小畑 原作を読んで「これ以上はないものが来た!」と興奮しました。主人公のビジュアルには、優等生で美形でという“整った顔”で自分の一番得意なものを持ってくることができました。リアルな現代劇で、死神も死体も探偵も出てくる、白黒のメリハリをつけた絵で…すべてがやりたかったもので揃った作品です。

――回を増すごとに絵のクオリティが上がり、毎回が驚きでした。

小畑 『ヒカルの碁』の後半の「この先、この絵の延長で進んでいきたい」という気持ちのまま突入できて、「さらにいける! いくらでも描けるぞ!」と筆も乗っていきました。『ヒカルの碁』もそうですが描いている時の充足感がすごく、自分のコンプレックスを感じる暇もありませんでした。1話は今読んでもよくできていると我ながら思います(笑)。線も意外と少なくて、つまり迷いがないんですよね。

――次の連載『BLUE DRAGON ラルΩグラド』は、『ランプ』以来のファンタジー連載です。

小畑 自分ではよく「ファンタジーが好き、描きたい」と思っているのですが、その理由は自由な世界に憧れているからなんでしょうね。でもいざ描き始めると、自由だからこそついつい描き込んでしまう。自分がファンタジーを描く時は、ある程度縛りがあったり、あるいはその世界の設定やディテールまで全部把握して自分の中で納得できていないと、どこまで描くべきか迷ってしまうんです。描くという面では自由とは逆の、ある程度の制約を求めているのかも知れませんね。

――その後の『バクマン。』は『ヒカルの碁』に次ぐ長期作品になりました。

小畑 最初は「自分の関わる題材だからリアルな絵を描ける」と思っていたら、どんどん台詞が増えて、それを収めることに精いっぱいで。その内に『バクマン。』は台詞だけで面白いから、台詞が最も主役になるように絵を描くのがベストと考えるようになりました。大変な作品でしたが「この配置だと台詞が全部収まる」「コマをこう使ったらダイナミックに伝わる」とか、漫画のための色んな実験ができました。

――作中作の絵柄の変化など、表現の見どころも多かったですよね。

小畑 様々な画風で作中作を描いてみましたが、自分は意外と絵柄を変えられないことが分かりました。それに「登場人物つまり他人が描く絵だから」と割り切って、自分の美意識を捨てて描くのですが、それがストレスになったりもして。題材も自分の生活を描くようなものなので、漫画の中でも仕事の話ばかりしていて逃げ場がない…。そんな感じで目まぐるしい連載だったせいか、内容を結構忘れているんですよ。だから今読み返すと新鮮で面白いです(笑)。

――その後は、「週刊ヤングジャンプ」連載の『All You Need Is Kill』でした。

小畑 『All You~』は原作がすごく面白かったのと、SFも好きなので挑戦させて貰いました。作中に登場するパワードスーツ(機動ジャケット)なんて男子の究極の夢だから、絶対描きたいじゃないですか(笑)。原作では補助装置のようなイメージでしたが、80年代のロボットものを見てきた自分としては「乗り込む!」方が燃えるので、思い切ってああいったデザインにさせて貰いました。

【次回予告】

デビュー時より緻密な描写で注目を集めていた小畑だが、その流麗な作画の裏側には、試行錯誤の歴史があった。やがて『ヒカルの碁』が大きな転機となり、小畑の才能は開花していくこととなる。
次回は小畑の執筆スタイルに注目。実際の原稿の描き方や、モチーフに対する独自のこだわりを掘り下げていく!

第3回は7/1更新予定!!