小畑健 スペシャルインタビュー
【第4回】デジタルと塗り…華やかな彩色の裏側

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ライブ感で追い立てられるカラー

――カラーの塗りはどのように決められていますか?

小畑 塗っている最中の色は、その場のライブ感で考えています。もちろん最初に全体の色は考えていますが、ぼんやりと何系の色か、くらいです。例えば原画展キービジュアルの『ヒカルの碁』は、ラフ案の段階から全体的に緑っぽく、ヒカル自身は黄色っぽく…というのが頭にありました。そうして完成版の色のイメージができたら、それがハマるようにラフの構図も一緒に進めていく感じですね。

――小畑先生の中で、決まった塗り方はありますか?

小畑 必ず顔から塗り始めます。これまでの経験から、顔だけは誤魔化しようがなく、ここが上手くいかないと進める気力が沸いてこない。なのでまずは顔を完成させて安心したいんです。それに顔が途中のまま他を進めても、ずっと顔が気になって集中できないんですよ。あとは失敗しても直せるように、必ず薄い色で様子を見ながら塗っていくようにしています。

――先ほどの、考えながらライブ感で塗っているというのは?

小畑 全体のイメージは決めても、細部は塗っている時に考えます。既に決まっているところを塗りつつ、一歩先の「ここに何を重ねようか」と考えて、そして大抵「ヤバイヤバイ!」と内心で焦っています(笑)。なぜ「ヤバイ」かというと、速く塗らないとコピックが乾いてムラになることもありますが、大半の理由は「描き上がっていないと落ち着かない」から。白いところや途中のところがあると、なぜか安心できないんですよ。カラーを塗ることの根本的な苦手意識がここにもありますね。

――小畑先生がカラーが苦手というのが意外なのですが…!?

小畑 子供の頃から線画は学校の先生に褒められるけれど、塗りは駄目だと言われ続けていたんです。自分でも塗り進めながら、あまりの下手さにどんどんへこんでいっていました。白と黒のシンプルな線画の方が好きだったんでしょう。プロになった当初も、初代の担当さんに「もっと丁寧に塗って!」と言われていました(笑)。それで今でも塗りは時々失敗します。

――失敗というのが、いまひとつ想像がつかないのですが…。

小畑 今回のキービジュアルでもいくつかあります。『ヒカルの碁』でいえば背景に五重塔がありますが、ピントが合ってないようにぼんやり描こうと思っていたので、うろ覚えで描いてしまった。できたものは五重塔とは似ても似つかぬ見知らぬ塔で…。で、その部分に上から紙を貼ってちゃんと資料を見ながら描き直しました。だから裏から見ると修正前の絵が見えます(笑)。『DEATH NOTE』はリュークの手ですね。最初は左手を下ろしたポーズにしていたのですが、他の絵と並べたビジュアルになった時、あまりに動きがないので腕を上げさせたんです。後から思うと、バックの両サイドの死神の赤も自分ではいまいちかも…。塗っている時は気にならなかったのですが、青とかグレーとか、もっと落ち着いた感じにしたかった。でも作品のテイストやキービジュアルという役割から、自分の好みよりも赤にして正解だと思います。

――小畑先生にとって「絵の完成」とは、どのようなタイミングで判断されますか?

小畑 締切のタイムリミットと、「もうこれ以上は塗り続けられない」と疲れ果てた時です。逆に言えば、時間も気力も続くのであれば、ずっと描いていると思います。実は過去に、納得いくまで描き続けられたこともあって、その時は本当に楽しかった。そして未だにその記憶が残っているから、またいつか、ああいった塗り方ができないかと自分に期待してしまうんです(笑)。

――現在のカラーの着彩ではコピックをメインに使われていますが、他にお気に入りの画材はありますか?

小畑 大分前に使ったリキテックスは楽しかったですね。厚塗りをしても透明感が出せるし、自分に向いていると思います。時間がないため今はコピックに落ち着いていますが、時間さえあればリキテックスはすごくいい画材です。

【次回予告】

デジタルへの距離感や色塗りの苦手意識など、小畑の意外な側面を知ることができた今回のインタビュー。そして言葉の端々には常に、まだ見ぬ「すごい絵」への並々ならぬ意欲が表れていた。
次回、いよいよ最終回! 小畑の今後の展望と原画展最大の見どころ「NEVER COMPLETE」の真意を探る!!

第5回は7/16更新予定!!